暗号資産の正確な評価方法は?

執筆:Four Pillars
翻訳:AididaoJP、Foresight News

トークン評価の重要指標:EV/持有者収入。

ポイント

  • トークン ≠ 株式。評価時には企業価値 / 持有者収入を用いるべきであり、企業価値 / プロトコル収入ではない。

  • 付与比率(最終的に持有者が受け取れるプロトコル収入の割合)は重要な診断指標。比較対象のプロジェクトでは、この比率は25%から100%までさまざま。

  • 「希薄化」も区別が必要。チームのインセンティブは実際の経営コスト(評価倍率に含めるべき)だが、投資家のロック解除による売却は市場イベント(倍率に含めない)。

  • 国庫の価値は「引き出し可能性」を見るべき。「国庫にいくらあるか」ではなく、「持有者が引き出せるかどうか」が問題。

暗号資産の評価にはよくある誤解がある:年化収益5億ドルのプロトコルを例に、市値をこの数字で割り、数倍の倍率を出し、「安い」と判断するケースだ。この計算法は分母も分子も誤り。投資家は5倍の評価で買っていると思いがちだが、実際に受け取れる収入を考慮すると、倍率は20倍になる可能性もある。

PER(株価収益率)は良い出発点だが、資産負債表や資本構造を無視している。これが伝統的金融でEV/EBITDAを使う理由だ。しかし、これをトークンに適用すると、根本的な問題が三つ生じる:

  • 国庫資産:持有者に法的な請求権がない。

  • プロトコル収入:大部分は持ち主の手に届かない可能性。

  • 最大コスト:利益計算書には現れず、新たなトークン発行の形で現れる。

本稿は、トークンの特性に適した評価フレームワークを構築することを目的とする。核心指標は企業価値 / 持有者収入—つまり、1ドルの最終的に自分の手に入る収入に対して支払った価格であり、資産負債表と実際の事業コストの影響も考慮する。例として、HYPE、PUMP、MAPLE、JUP、SKYの五つのプロトコルを用いて説明する。これは投資勧誘ではなく、あくまで方法のデモンストレーションだ。

  1. トークンの「企業価値」はどう計算する?

多くのトークン評価の最初の誤りは、直接市値を用いることだが、市値は企業価値と同じではない。

伝統的金融では、論理は明快:

企業価値 = 時価総額 + 負債 - 現金

なぜなら、企業全体を買収すれば負債も引き継ぎ、現金も持ち帰るからだ。現金を差し引くのは合理的だ。なぜなら、その資金は法的に自分のものだから。

しかし、暗号の世界では事情は複雑だ。自動焼却(USDC流入→トークン永久焼却、誰もUSDCを受け取れない)、基金会のウォレット(数億ドル眠るが、ガバナンス権も分配機能もない)など、多様なケースがある。重要なのは「国庫に何があるか」ではなく、「持ち主が引き出せるかどうか」だ(もちろん、全体を買収した場合は割引が消える。これは伝統金融と同じだ。ここでいう「請求権の割引」は、少数株主の我々にとっての話だ)。

「企業価値」という用語を使うのは、論理的に通じるからだ。コア事業を得るためにいくら払う必要があるかを計算し、資産負債表の自分に属さない部分を除外する。

式はこうなる:

トークンの企業価値 = 時価総額 + トークン負債 - 引き出し可能な国庫資産

現状、多くのプロトコルには「トークン負債」がないため、焦点は通常国庫資産に向かう。

国庫に何があるかを分解すると、一般的に三つの資産がある:

  • ステーブルコイン:実金であり、原則完全に引き出せる。

  • ネイティブトークン:自社トークン。これを差し引くと「自分を減らす」ことになり、少なくとも50%の割引が必要。

  • プロトコルが所有する流動性(POL)やその他資産。

総国庫資産 = ステーブルコイン + ネイティブトークン ×(1 - 適切な割引率) + POL

ただし、総資産=引き出し可能資産ではない。これがこのフレームワークの核心課題だ。

中には割引可能な国庫を持たないプロトコルもある。例えば、USDC流入→トークン回収・焼却の純粋な焼却メカニズムは、資産負債表に何も残さない。この場合、引き出し可能な国庫資産=0、企業価値=時価総額となる。これは最も明快なケースで、主観判断は不要だ。

実際の資産を持つ国庫については、「請求権割引」フレームを導入し、持ち主が実際に支配できる程度に応じて0%から100%まで設定する:

  • 0%割引:自動回収・焼却、または資金用途が完全に持ち主の自由。

  • 25%割引:DAOが活発に機能し、実績ある分配履歴がある。

  • 50%割引:ガバナンス権はあるが、実行されていない。

  • 75%割引:国庫はチームがコントロールし、ガバナンスは弱い。

  • 100%割引:資金は基金会が管理し、持ち主には請求権がない。

これらの割合は最も主観的で、議論の余地がある。ただ、25%と50%の間の議論は、国庫を無視して市盈率だけを語るよりは意味がある。

実例を見てみよう:

  • Maple:国庫は936万ドル(99.7%はステーブルコイン)。金額は小さく、企業価値は2.72億ドルから2.65億ドルに微調整され、影響は小さい。

  • SKY:国庫は1.403億ドルだが、99.9%は自社トークン。50%割引を適用し、引き出し可能価値は約7020万ドル。企業価値は16.9億ドルから16.2億ドルに下がる。

  • PUMP:約7億ドルのステーブルコインを保有と報道されるが、ガバナンスや分配チャネルがなく、持ち主は実質的に受け取れない。したがって引き出し可能資産=0、時価総額=企業価値。

  • HYPE、JUP:純粋な焼却や閉鎖国庫のため、判断不要。企業価値=時価総額。

  1. 収入とコスト:実際に手元に入るのはどれだけ?

プロトコルの稼ぎと、持ち主が実際に受け取る金額の差は、多くの評価フレームワークの失敗点であり、倍率に大きく影響する。

収入は三層の滝のように考えられる:

  • 料金:ユーザーが支払う総額。

  • プロトコル収入:LPや検証者など「供給側」に支払った後に残る部分。

  • 持ち主収入:最終的に買い戻し・焼却・直接分配を通じて持ち主に届く部分。

この間には二つの変換率がある:

  • 留存率 = プロトコル収入 ÷ 料金(総支払額に対して、どれだけ残るか)

  • 付与比率(應計比率)= 持ち主収入 ÷ プロトコル収入(残った中で実際に持ち主に届く割合)

この二つの比率の積は、結果に大きな差をもたらす:

  • HYPE:留存率89.6%、付与比率100%。9億ドルの料金のうち、約8.057億ドルが最終的に持ち主に流れる。

  • Maple:留存率13%(14.05百万ドルの料金から1.83百万ドルの収入)、付与比率25.1%(1.83百万ドルの収入から460万ドルの持ち主収入)。合計の実効率は3%に過ぎず、HYPEは90%に近い。

同じフレーム内で、3%と90%では大きな差がある。もし「EV/料金」や「EV/プロトコル収入」で比較すれば、天と地の差だ。

なぜ分母は「持ち主収入」なのか?

伝統的金融では、EV/収入は成立する。株主は残余請求権を持ち、法律上もそうだからだ。しかし、トークンの持ち主はその権利を持たない。彼らは、トークン経済モデルが与える範囲内の収入しか得られない。もし収入がチームのコントロールする国庫にあり、分配の仕組みがなければ、その収入は「あなたのもの」ではない。

「プロトコル収入」を分母に使うと、付与比率の低いプロトコルを美化し、実態より「安い」と見せかけることになる。これを「付与割引」と呼ぶ。

例:Mapleの場合

  • EV/プロトコル収入 = 14.5倍

  • EV/持ち主収入 = 57.7倍

この差は約4倍。異なる分母を使うと、市場の評価も大きく変わる。

  1. コスト:希薄化も三段階

「希薄化」という言葉は暗号界で広義に使われすぎている。分類を誤ると評価も誤る。

第一:チームのインセンティブ(株式報酬)=経営コスト

バフェットは数十年前に言った:「インセンティブをコストとみなさないなら、何だ?」。伝統的には利益から差し引かれ、純利益を減らす。暗号界では、新たなトークンの流入として現れるが、経済的本質は同じだ。これも運営コストだ。

  • HYPE:チームインセンティブ年化4.649億ドル、持ち主収入の57.7%を消費。

  • PUMP:1.285億ドルのチームインセンティブ。

これらは評価倍率に含めるべきだ。

第二:運営用トークンコスト(エコシステム誘導、ユーザー獲得など)=運営コスト

これも実費であり、倍率に含めるべき。PUMPはチームインセンティブのほか、7700万ドルの運営用トークンコストがあり、合計2.055億ドル。

判断基準は簡単:新たなトークン供給を生み出しているか?

  • 既存収入を分配しているだけなら、コストは前述の資金流に含まれる(すなわち、プロトコル収入と持ち主収入の差)。

  • しかし、未流通のトークンを新たに発行・解放している場合は、真の希薄化=事業コストだ。

第三:投資者のロックアップ解放=市場イベント、経営コストではない

アップルの利益からVCの売却を差し引かないのと同じ。これも経営倍率には含めない。

PUMPの潜在的売圧は年化8350万ドル、時価総額の7.3%。2026年8月に大規模な解放があり、その後12ヶ月の実売圧は約4870万ドル(7/12計算)。市場への影響は大きいが、経営コストではない。これを「総トークン持ち主税」として別指標化(トークンコスト+潜在売圧/持ち主収入の割合)するが、コア評価倍率には含めない。

  1. 四つのコア倍率と一つの診断指標

以上の論理に基づき、以下の指標を定義(ここでは統一し、後述で直接引用):

  • EV/持ち主収入(コア指標):最終的に自分の手に入る1ドルの収入に対して、いくら支払ったか。

  • 時価総額 / 持ち主収入:同じだが、国庫調整なし。差は資産負債表の影響。

  • EV/(持ち主収入 - トークンコスト)(コスト調整後倍率):実際の事業コスト(チームインセンティブ、運営コスト)を差し引いた倍率。ただし、投資者の売圧は除く。

  • EV/プロトコル収入(参考):EV/持ち主収入との差は、「付与割引」の大きさを示す。

  • 総トークン持ち主税(診断指標)=(トークンコスト+投資者売圧)÷持ち主収入。事業コストと供給圧力の二重影響を総合的に反映。例:PUMPは60.3%、つまり1ドルの収入に対し、0.603ドルの新供給圧力がかかる。

この数字は直接的に評価の高低を示すわけではないが、キャッシュフローと供給量の関係性を示唆する。

  1. データ概要とケーススタディ
  • HYPE:付与比率100%、持ち主収入の9.4倍。ただし、チームインセンティブコストが高いため、コスト調整後は22.2倍に上昇。収入構造は明快。

  • PUMP:一見最安(2.4倍)だが、付与比率98.8%。国庫から引き出せず、2026年8月に大規模解放予定。コスト調整後は4.2倍、総トークン持ち主税は60.3%と最高値。

  • MAPLE:付与割引最大(4倍)。プロトコル収入14.5倍に対し、持ち主収入は57.7倍。差は大きい。トークンコストなしなので、コスト調整後倍率は変わらず。

  • JUP:資産負債表が最もクリーン。ネットゼロ排出のガバナンス、トークンコストなし、投資者売圧なし、引き出し可能国庫なし。すべての倍率は約7.7倍に近い。

  • SKY:付与比率45.8%、最も「分母の選び方が評価にどう影響するか」を示す良い例。プロトコル収入倍率は7.3倍(安いと思えるが)、持ち主収入倍率は16.0倍(そう安くない)。国庫はほぼ(99.9%)自社トークンであり、価値には割引が必要。

  1. まとめ

このフレームワークには欠点もある:

  • 国庫請求権割引は主観的:私が25%、あなたが50%を付けても、誰も説得できない。

  • 「増発」の判断は複雑化する場合も:一部のプロトコルは発行機能を持つが、分配チャネルが死んでいるケースもあり、その場合は曖昧。

  • データのノイズ:DeFiLlamaの30日年化データは、スナップショット月の違いにより、同じプロトコルでも高く見えたり安く見えたりする。

しかし、少なくとも実用的な出発点だ。EV/持ち主収入を、資産負債表と実ビジネスコストに基づき調整することで、「支払った金額が実際に最終的に自分の手に入る収入の何倍か」をより正確に把握できる。

プロトコルの稼ぎと持ち主が受け取る金額の差は、現市場の最大のファンダメンタルのミスマッチだ。多くのプロトコルは数億ドルの費用を生み出すが、持ち主はわずかしか受け取らず、多くの評価フレームはこの両者を区別しない。

幸い、業界は価値捕捉に本腰を入れ始めている。費用のスイッチが入り、買い戻しがインフレ誘導を置き換え、ガバナンスの投票もインセンティブ停止に向かっている。私たちは、より正確に実態を測るツールを構築中だ。

  1. データソースと手法の説明
  • 収入データ:DeFiLlamaの年化データ(直近30日×12)。優れている点は半年分より敏感だが、単月の変動によるノイズもある。

  • 持ち主収入:DeFiLlamaの「持ち主収入」欄をそのまま採用。回購・焼却・直接分配のみを含む。

  • 国庫データ:

    • MAPLE:936万ドル(DeFiLlama、99.7%はステーブルコイン)

    • SKY:1.403億ドル(DeFiLlama、99.9%は自社トークン)

    • JUP:0ドル(閉鎖)

    • PUMP:ステーブルコインの中央値推定5億ドル(実範囲2.86億〜8億ドル)

  • トークンコスト:

    • MAPLE:0ドル。MIP-019案(2025年10月)終了済。インフレのスマートコントラクトは稼働中だが、分配チャネルなし。

    • SKY:0ドル。貯蓄モジュール(STR)がSPKとChronicle Pointsを配布、SKYトークンは未流通。

    • JUP:0ドル。2026年2月の「ネットゼロ排出」提案(75%賛成)成立。DAO国庫は2027年まで閉鎖。

  • 投資者の売圧:

    • PUMP:年化8350万ドルの潜在売圧。解放は2026年8月以降で、12ヶ月間の実売圧は約4870万ドル(7/12計算)。
  • 借入・貸付指標:

    • MAPLE:実資産運用規模(AUM:37.9億ドル、2026年第1四半期報告)を使用。DeFiLlamaのTVL(19.45億ドル)ではなく。

    • NIM(純利差):プロトコル収入 / AUM。詳細はExcel付録参照。

  • 現金運営支出:未推定。情報非公開のため、推測は精度を損なう。

  • 株式インセンティブ評価:現行トークン価格で計算。価格変動に敏感。

以上

HYPE-0.86%
PUMP3.89%
JUP5.45%
SKY5.64%
原文表示
このページには第三者のコンテンツが含まれている場合があり、情報提供のみを目的としております(表明・保証をするものではありません)。Gateによる見解の支持や、金融・専門的な助言とみなされるべきものではありません。詳細については免責事項をご覧ください。
  • 報酬
  • コメント
  • リポスト
  • 共有
コメント
0/400
コメントなし
  • ピン